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2019年07月02日(火) 15時00分
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カテゴリー: 漫薦
皆さん、「漫薦」の第2弾が登場です!

「漫薦」とは、プロ漫画家の視点から、面白くて薦めたいと思われる作品を紹介するため、ぽけまんの漫画家をインタビューする企画です。

「プロ漫画家にも面白いと言われる作品を知りたい!」と思われる方であれば、この企画をお見逃しなく!

ぽけまんの先生に関する記事を書かせて頂いているシュウ1です。

第2弾として、『いとしのエリー』『ふたりの気持ち』などを描かれた高見まこ先生のオススメをうかがってきました!

シュウ1:

本日はお忙しいところ、インタビューをさせていただきましてありがとうございます。

では本日のテーマですが、先生はどんな漫画作品を皆さんに薦めたいでしょうか?

高見先生:

まずは、谷口ジロー先生の『坊ちゃんの時代』シリーズですね。(原作:関川夏央)



“『「坊っちゃん」の時代』とは、1987年から1996年まで漫画アクション(双葉社)で連載された関川夏央・谷口ジローの劇画。

夏目漱石を中心として明治の文学者たちや世相を描く。

一般には痛快な読み物として受け入れられている『坊っちゃん』は、文明開化という大きな時代の流れに付いて行けなかった者の悲劇だとする関川独自の発想を基に、『坊っちゃん』を執筆していた当時の夏目漱石を中心として明治の文学者たちや世相を描いた作品である。

全5部構成。第2回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞作品。”(ウィキペディアより)

シュウ1:

え〜!このシリーズは5部構成ですね。

先生が一番好きなのはどちらですか。

高見先生:

谷口ジロー先生の「坊ちゃんの時代」シリーズでは、啄木の回が一番好きです。



シュウ1:

石川啄木ですか。

それは何故でしょうか。

高見先生:

歴史上の人物がすごく鮮明に描かれていて、かつ「ふっ」という笑ってしまう場面もあったり、夏目漱石の描き方も、あーこいう人がいるなあ、という感じがします。

読み進めているうちに、啄木の意志の弱さ(笑)、女性に弱く金銭感覚もない、そのへんが、あー困っちゃうなあと思いながら、ついついと読み込んでしまって、その世界に入り込んでいきました。

憎めないところがあって、才能もあるかというか、そういう踏ん切りのつかない人間臭さが描かれていて、そいうところがすごいなあと思いながらテキストのようにして読んでました。

とにかく描かれている啄木の意志の弱さや、それでいてどこか憎めない様子が好きになってしまいます。

谷口先生のこの作品は、ユーモアというか、絵はすごく劇画風で内容的にも決してギャグとかではないですけれど、笑える部分がすごく多いです。



(出典:『「坊っちゃん」の時代』第3部 「かの蒼空に」)

シュウ1:

なるほど、高見先生は谷口ジロー先生のファンですか。

高見先生:

そうですね。

だいぶ前に、谷口先生にサインをしていただく機会があり、宛名を書いていただく際に、「高見まこって、漫画家と同じ名前だねえ」と言われたことが面白く思い出されます(笑)



シュウ1:

ははは、そういうこともあったんですか。

面白いエピソードですね。

谷口先生の作品は何が魅力的だと思いますか。

高見先生:

谷口先生の作品の何がすごいかというと、谷口先生の漫画は音が聞こえてきます。描かれたものに臨場感や生活感が溢れていて、音楽が使えない漫画でも、音が聞こえてくるようでした。

このシリーズにはその点を特に強く感じました。

例として:




生活感に満ちた街並みと臨場感溢れる宴会の描写

(出典:『「坊っちゃん」の時代』シリーズ)

高見先生:

また、谷口先生から『Mon année』というフランスで発売された作品と谷口作品のグッズのメモ帳を送って頂いたこともありました。

また色々とお話を伺いたいと思っていた矢先、先日の谷口先生の突然の訃報に接し、言葉もありませんでした、、、

シュウ1:

そうですね。

谷口先生の急逝は漫画界にとって大きな痛みですね。



(フランスで発売された谷口先生の『Mon année』)



(谷口作品をグッズ化したメモ帳)

シュウ1:

『「坊っちゃん」の時代』シリーズなど、谷口ジロー先生の作品に興味がある方は、ぜひ読んでみてください!

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シュウ1:

先生、それは?

高見先生:

これも今回薦めたい作品です。手塚治虫先生の『ばるぼら』です。

(『ばるぼら』とは、1973年~1974年の間に『ビッグコミック』で連載された作品です。

悪魔か女神か―謎の少女バルボラが人気作家・美倉洋介と駅で出会った。

自堕落な彼女が家に居着いてからというもの、美倉のインスピレーションは冴え渡り…。

ふしぎな少女ばるぼらを巡る不可思議な物語です。)

シュウ1:

内容から見ると、手塚治虫先生の作品にも珍しい怪作ですね。この作品の魅力は何ですか。

高見先生:

手塚治虫先生の「ばるぼら」は大人っぽいところが魅力的で、芸術の神はこういう存在なのかと衝撃を受けました。

バルボラの母さんも土偶みたいな格好をした人で、すごく強烈な印象がありました。

昔の作品ですけど、若い方々にも読んでいただきたいと思います。

シュウ1:

なるほど、オススメありがとうございます。

ちなみに、さっきから気になってるんですが、先生が持っていらっしゃる単行本はページが波打っていましたね。

高見先生:

10年前、以前住んでいた家の裏の川が氾濫し、半地下にあった仕事場が水没してしまいました。その際、原稿やイラストなどの自身の作品や、集めていた資料、漫画や本一式が水没してしまいました。

シュウ1:

えっ!?とんでもない大惨事じゃないんですか。原稿まで、、、もったいないですね。

高見先生:

そうですね。

そのため、この『坊ちゃんの時代』や『バルボラ』の単行本は少しページが波打っていました。

シュウ1:

「波瀾万丈」な経験をしてきた単行本ですね。

いろいろ薦めていただきまして、ありがとうございました!

高見まこ先生のプロフィール

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